カッチンの映画レビューの時間です。
今回レビューする映画は『エール!』
第94回アカデミー賞で作品賞を受賞した『コーダ あいのうた』は、このフランス映画の『エール』をリメイクした作品です。
つまり元になったオリジナル作品ということですね。
『聴覚障害を持つ家族の中で唯一耳が聞こえる高校生のポーラは、仲良しの家族と幸せな毎日を送っていましたが、音楽の教師から歌の才能を認められパリの音楽学校の試験を勧められます。
歌の楽しさに目覚め始めたポーラでしたが、歌声を聞くことができない家族は才能を信じられず猛反対し、ポーラも聴覚障害を持つ家族を残していくことに苦悩していて…』
という感じのあらすじです。
※こちらのレビューはネタバレを含むので、まだ観てない人は鑑賞してから戻ってきてください。
少しだけ退屈な序盤がラストにもたらす効果
主人公は「自分以外の家族は聴覚障害を持っている」っていう環境で生まれ育ってるんですけど、これだけ聞くと大変でちょっと暗めなテイストでストーリーが展開していくのかな?って思う人が多いかもしれません。
でも映画を観ると完全にその逆なんです。
主人公のポーラには両親と弟がいるんですけど、酪農っていうのかな?バリバリ仕事してて、マルシェみたいな所でチーズを売ったりして凄く明るく生きてるんです。
お父さんは「耳が聞こえないのは個性」って言ってて、村長にも立候補しちゃうぐらいの行動派です。
耳が聞こえない分表情で感情を伝えたりするから、みんな表情がハンパじゃなく豊かで、なんだか見てるだけでこっちも明るい気分になってくるんですよね。
実際にポーラの両親はすっごくポジティブな性格で素敵です。
とは言ってもポーラに頼らざるを得ない状況は多くて、仕事の電話とかは完全にポーラが対応しないとなりません。
そんな感じで家族との時間を過ごしているポーラの日常が映画の前半で描かれてるんですけど、学校生活も描いているとはいえ、そこまでの事件が起きるわけじゃないので盛り上がりは正直あんまりなくて、序盤は若干退屈を感じる場面もありました。
ポーラが音楽教師に歌の才能を見出されるあたりから、物語が動き出す感じですかね。
ポーラは両親が医者にかかる時も通訳として同席しなくちゃならないんですけど、大人の営みに関する症状の時に、こういう環境だからオープンにならざるを得ないのか、海外ってこういうもんなのかな?っていうのがカッチンにはわかりませんでした。
弟がゴムでアレルギーを起こした時も、そういうことをしようとしたことについては問題にしてなかったから、やっぱり環境関係なしでオープンなのかもしれないですね。
中盤までに家族の絆の深さや、ただ1人耳が聞こえるポーラの存在の大きさがしっかり描かれてたので、その後のパリの音楽学校の選択肢が生まれた時のポーラの葛藤が強く伝わってきました。
見事な演出だった学校での歌唱シーン
家族と離れてパリで暮らすことはできないって感じて、音楽教師に試験の辞退を告げたポーラは片思いの相手から学校の合唱コンクールみたいな場所で「デュエットしないか?」って誘われます。
ポーラは「先生に顔向けできない」って断るんですけど、デュエットの提案は実は先生がしてたんですよね。
ポーラにいかに才能を感じてたかがわかりますし、先生に申し訳なさを感じてるポーラの性格の良さも伝わってきました。
母親がポーラの育て方を自分が間違えたんじゃないかって嘆くシーンがありましたけど、めちゃくちゃ優しくて立派に育ってて自慢の娘ですよ、ポーラは。
みんなとの合唱の後にデュエットが始まるんですけど、歌い始めた瞬間に無音になる演出には完全にやられました。
合唱コンクールを見に来てる両親と弟の主観の中でポーラの歌唱が続くんですけど、家族は歌声を聴くことができないけど、それでも空気感のようなもので娘の歌の才能を感じるんです。
さらに客席にいる父兄たちが涙を流してるのを見て、父親は娘の歌の才能を確信した様子でした。
ポーラ役のルアンヌ・エメラという女優さんが本当にいい声で歌が上手いので、てっきり歌を全面に出して感動させてくるのかなと思いきや、まさかの無音の演出に完全に視界がぼやけました。
「こんなのズルいわ~」って泣いてたカッチンは、まさかこの後にさらにズルい演出が待ってるとは思いもしてませんでした…。
この無音の演出の歌唱シーンを見て、「聴覚障害を持つ人たちはこういう世界で生きてるんだなぁ」って改めて感じました。
このシーンで泣かない人いるの?
娘の歌が他人を感動させている様子を見た父親は、パリの音楽学校の試験を受けるように伝えて、家族みんなで試験会場に向かうんですけど、その前に父親が歌うポーラの首元に手を当てて懸命に歌を聴こうとするシーンもすっごく素敵でした。
試験会場に向かうのも、弟も含めて当たり前に家族全員なのがまたいいんですよね。
ポーラからメールをもらった片思いの男性が音楽教師の家に行って車を借りようとした時に、断られた後にメールを見せた時の音楽教師の「早く言え!」っていうツッコミがなぜか無性におもしろかったです(笑)
でもこの音楽教師がいなかったら伴奏なしでアカペラで歌わされるところだったから、2人ともファインプレーでした。
そして家族が見守る中で始まったポーラの歌唱シーンは、まったく想像してなかったシーンになってて完全に涙腺が崩壊しました。
選曲が完璧なだけじゃなくて、まさか家族に向けて手話付きで歌い出すなんて!って感じで、ひとしきり泣いた後に「こんなの泣かない人いるの?」ってツッコみたくなりました。
歌ってるポーラの表情もいいし、家族のリアクションも最高だし、審査員たちの反応も、ピアノ伴奏に駆け付けた音楽教師も我が子を見守るような温かさがあって、片思いの相手の抑えた演技も素敵でした。
歌詞の内容も最高でしたよね!
歌い終わった後に審査員に選曲を褒められたポーラが、あっさり去っていくのも良いんですよねぇ。
「なんて素敵な映画なんだ!」って感動に浸ってたんですけど、この映画の感動はまだ終わりじゃなかったんです。
クライマックスまで手抜きゼロの傑作映画
音楽学校の試験に受かってパリに行くことになったポーラの荷物を、弟が「自分が運ぶ!」っていった感じで持つ些細なシーンにもウルっとさせられたんですけど、その後の家族との別れがあまりにもあっさりでちょっと拍子抜けしました。
ところが「こういう別れ方も逆にいいか」なんて思ってた矢先にですね、ポーラが運転する音楽教師に頼んで車を停めてもらって、家族の元に走り出すんです。
聴覚障害を持っている影響が大いにあると思うんですけど、ポーラ一家の愛情表現ってものすごいんです。
このシーンでもグワーって涙腺が緩んでしまったんですけど、車に走りながら戻るポーラの希望を感じさせる表情がとにかく良くて、気が付くと泣きながら笑顔になってました。
最後の最後まで手抜きが一切ない演出を見せてくれて、心温まるって言葉がピッタリな本当に素敵な映画でした。
あと感動以外にも、これまで歌の練習をしてこなかったポーラが3カ月間練習しただけで難関学校に合格する姿を見て、「才能って残酷だな」って思いました。
何年も努力したけど合格できないって人もきっとたくさんいますもんね。
皆さんの感想も気になるので、鑑賞した方はコメント欄で教えてくれると嬉しいです。
それではまた映画レビューでお会いしましょう。


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