カッチンの映画レビューのお時間です。
今回レビューする映画は『侍タイムスリッパー』。
幕末の京都を生きる会津藩士の侍が雷に打たれタイムスリップして、現代の時代劇撮影所で目を覚まし、葛藤と戸惑いに苦悩しながら斬られ役として生きていく話です。
自主製作映画でありながら日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した、とんでもない快挙を成し遂げた、語り継がれるであろう映画です。
普段は自主製作映画に絶対に協力しないと言われる東映京都撮影所が、脚本を読んで全面協力を申し出たそうです。
相当惚れ込んだのか、ロケセットや衣装やメイクなど本当に全面的に協力しています。
池袋にあるシネマ・ロサという映画館でひっそりと上映が開始されたこの映画は、口コミで評判がが広がって、3ヶ月後にはなんと344の映画館で上映されました。
自主製作映画なのに興行収入2億円を突破する快挙を成し遂げていて、アメリカで『ナポレオン・ダイナマイト』という低予算映画が旋風を巻き起こした時と似ているなって思いました。
この『侍タイムスリッパー』、実際めちゃくちゃ面白いんですよね。
今回は「低予算の自主制作映画でありながら、どうしてこんなに面白いのか?」という点も、感想と一緒に深堀していきたいと思います。
※ここから先はネタバレを含むので、まだ観てない人は鑑賞後に戻ってきてください!
設定のひと捻りで勝ちが確定していた!?
『侍タイムスリッパー』が話題になると、あれよあれよと人気が爆発していきました。
瞬間最大風速はかなりのもんだった印象です。
そんな快進撃を横目にしながらですね、実はカッチンはかなり出遅れてこの作品を鑑賞しているんです。
決して特に深い理由やこだわりがあるわけじゃなくて、流行ると醒める天邪鬼的な良くない性格が顔を出していたんです。
さらに「自主製作映画でしょ?言ってもそんなに面白いことはないでしょ」という思いが頭をもたげていたからでした。
異例の大ヒットなった『カメラを止めるな!』も、決してつまらなくはなかったもののカッチン的には実は「はて?そこまで面白いか…?」という印象だったんです。
低予算であそこまでヒットしたのは本当にすごいと思いますが…。
でもあの映画ってホントになんであそこまでヒットしたんだろう?もう1回観てみようかな…。
話を戻しますね。
そんな思いで敬遠していたんですが、「さすがにここまで話題になった映画を観てないのはマズいだろう」という思いから、一念発起して観てみたわけです。
鑑賞した結果ですが…ビックリするぐらい面白かったです。
侍が現代にタイムスリップしてくるっていうストーリーは、結構ありそうな感じですよね。
ただその設定に、「タイムスリップした先が時代劇の撮影所」っていう発想が加わった時点で、一気に面白すぎる設定に進化していました。
ありきたりなタイムスリップの展開って、目を覚ました瞬間に現代の街並みを見て「ええ!!」って驚愕するパターンじゃないですか?
でもこの映画は時代劇のセットの中で目を覚ましたから、一応見慣れた風景ではあるから、その時点ではそこまで驚かないっていう流れがとってもシュールなんですよね。
見たことがない町並みであるあるけど、時代としては合っているっていう始まりが新鮮でした。
戸惑いながら徘徊してたら時代劇ドラマの撮影に出くわして、作り物の魚に驚いた挙句に、主役を助太刀しようとして刀を抜くシーンですでに爆笑してしまいました。
お笑い芸人さんがコントでやってたら大爆笑しちゃう設定ですよね。
中川家さんとかで見たいなって思ったり。
まさに掴みはOKっていう感じで、この時点で映画の世界にガッツリ惹きこまれちゃいましたね。
しかも素敵だったのは設定だけじゃなくて、
『現代にタイムスリップしたことを自覚して、侍としての役割を果たせなかったショックで自分の人生を終わらせようとしながらも、周囲の人達との触れ合いの中で生きる希望を見つけて斬られ役に生きがいを感じる…。
でもかつて命を賭して闘った山形と再会したことで、侍としての自我が再び顔を出して葛藤する…。』
そんなロマン溢れるストーリーも素敵だったので、もう本当に最初から最後までバッチリだったんですよね。
ただ設定とストーリーが完璧だったとしてもですね、作りがチャチかったりキャストのお芝居が微妙だと、やっぱり厳しいんですよね。
小劇場の舞台でも、脚本は面白いのに作品全体としては微妙に感じてしまうなんてことがよくあります。
『侍タイムスリッパー』は自主製作映画ということで、かなり低予算で作られています。
でも不思議なほどに低予算っていう感じがなかったんですよね。
この部分も面白すぎる映画に仕上がった大きな要因だと思うので、少し詳しく解説します。
実は火の車どころじゃなかった撮影現場
京都東映撮影所がかなり協力していることも大きいと思うんですけど、『侍タイムスリッパー』は低予算ゆえによく見かける安っぽい感じがなかったんです。
意外と製作費があったのかな?なんて思った調べてみたら、想像以上にとんでもない状態で撮影が行われていました。
撮影はわずか10名ほどのスタッフで行っていて、安田監督は監督以外にも車両やパンフレットなどなど、結果的になんと12役もこなしていたそうです。
なのでエンドロールがギャグみたいになってるんですよね(笑)
しかも制作費のほとんどは、監督の貯金と愛車を売却したお金で賄われているんです。
まさにこれこそ背水の陣です。
さらにですね、助監督役で沙倉ゆうのさんという女優さんが出演しているんですけど、この女優さんも制作費の一部を立て替えているそうです。
この沙倉ゆうのさんは助監督役を凄く素敵に演じているんですけど、出番以外の時は普通に助監督役として働いていたそうです。
沙倉ゆうのさんの作品への貢献はこれだけじゃなくて、なんとお母さんも現場に来ていて、刀とかの小道具を管理してたみたいです。
「自主制作映画すぎるだろ!」とツッコみたくなるぐらいTHE・自主映画って感じの裏側なんですよね。
どう考えても超が過酷な状況なのに、どうして低予算映画にありがちなチャチさをまったく感じなかったのか…?
あ!ちなみに別に低予算でチャチい映画がダメって言ってるわけではないですよ!
そういう映画が評価されて次の作品で製作費が一気に増えるなんてケースもたくさんあると思うので、全然あっていいと思います。
個人的にカッチンは低予算映画でおもしろいと感じなかった経験があんまりなっていうだけです。
低予算映画が好きな人たちは、どうかカッチンに罵詈雑言を浴びせないでくださいね。
まず『侍タイムスリッパー』は衣装やセットを見て「安っぽいなぁ」って気になって醒めるシーンが皆無だったんです。
京都東映撮影所の協力があったからだろって言ったらそれまでなんだけど、それ以上に監督を始めとしたスタッフと、役者たちの執念の賜物なんじゃないかと思うんです。
そしてこの映画の低予算感を払拭する大きな役割を果たしているのは、キャスティングの素晴らしさだと強く感じています。
山口馬木也という絶妙なキャスティング
主役の高坂新左衛門を山口馬木也さんが演じたわけですが、高坂がこの人じゃなかったら『侍タイムスリッパー』はここまでの作品になっていなかった気がします。
カッチンはこの映画の出演者の中で、しっかり知っていたのは山口馬木也さんだけでした。
映像でも活躍されているけど舞台でも活動している印象で、地に足のついた感じで地道に俳優をやっているイメージを勝手に持っていたんですよね。
そんなイメージの山口馬木也さんが信念を持った侍の高坂を演じるのは、カッチン的には凄くピッタリだったんです。
映画を観終わった後に、山口馬木也さん以外の俳優が高坂を演じている姿が全く想像できないぐらいでした。
一歩間違うと失礼な物言いに聞こえてしまうかもしれないんですけど、山口馬木也さんの知名度もちょうどいいんですよね。
いくらなんでも見たことも聞いたこともない俳優が主役だったら、それはさすがに厳しかったと思うんです。
すごく演技の上手い俳優さんが演じてたとしても、観るまでのハードルが結構高くなっちゃうので。
逆に主演にものすごく有名な人をキャスティングできていたとしても、それはそれで周りのキャストとのバランスが悪くなる気がします。
そう考えると山口馬木也さんって、これ以上ないぐらいの絶妙さなんですよね。
純朴でまっすぐで不器用な高坂を、さすがの演技力で見事にリアルに演じて楽しませてくれました。
低予算感の払拭っていう意味でも、山口馬木也さんの存在は大きかったと思います。
そしてこの山口馬木也さんを取り囲む俳優陣も、びっくりするぐらいとにかく素敵だったんです。
映画のクオリティを底上げした出演俳優たち
『侍タイムスリッパー』は、主役の山口馬木也さんを取り囲む俳優陣にも心から拍手を送りたくなる作品だったんです。
高坂と同じく現代にタイムスリップしてきた因縁の長州藩士・山形、後の風見恭一郎を演じた冨家(ふけ)ノリマサさんは、さすがベテランといった感じで役柄のポジション同様に作品にドッシリと安定感をもたらしていました。
高坂と一緒に斬られ役を演じている俳優たちや、劇中の映画のスタッフ役などなど、あらゆる出演者の方たちの演技が本当に素晴らしかったんですよね。
失礼で申し訳ないですが、カッチンにとってはたぶん初めて見るであろう知らない俳優さんたちばかりでした。
こういった場合はだいたい「どうした?」と感じてしまう演技の役者さんがいるもんなのに、この映画は「WHAT’S?」と思うことが全然なかったのです。
皆さんすごく演技がうまくて、しかもそれだけじゃなくて終始見やすい演技をしてくれていました。
いい意味ですごくライトなお芝居をしていて「なんとか爪痕を…」なんてエゴを感じる俳優が皆無だったんです。
それどころか「なんでこの人たちはもっと世に出てないんだろう?」って思うぐらい、皆さん本当にお芝居が面白くて魅力的でした。
俳優の演技は演出も大きく関わってくるので、安田監督の手腕もきっと高いんだと思います。
どういう経緯でキャスティングされたのかはわからないんですけど、監督と信頼関係を築いてる役者さんが集結してたんじゃないのかなって勝手に想像しちゃいました。
出演者全員の演技のクオリティが高かったのも、低予算に感じさせない大きな理由の1つだったと思います。
スタッフだけじゃなくて、俳優たちも作品への愛をすごく持ってる感じがして、カッチンはロマンを感じずにいられませんでした。
特に山口馬木也さん演じる高坂の同僚になる、斬られて役の面々が、自分たちの役割をしっかりわかって演じてる感じがして凄く好きです。
日本映画界に一石を投じた『侍タイムスリッパー』
低予算かつ自主製作映画でありながら日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞するという快挙を成し遂げた『侍タイムスリッパー』。
いざ観てみたらやっぱり最高に面白くて、感動を与えてくれる傑作でした。
監督を始めとしたスタッフ、そして出演者の方々の作品への愛と執念が垣間見える作品で、邦画の大きな可能性を示した作品でもあると思います。
俳優ありきでヒットするかどうかが決まりがちな傾向がある日本映画界に、見事に一石を投じたのではないでしょうか。
だいぶ鑑賞するのが遅れてしまったのですが、「見逃さないで良かった〜」と心から思っています。
あぶなかったです。
とっても話題になった映画なので観ている人がほとんどだと思いますが、もしもまだ観ていない人がいたら、是非観てみてくださいね!
文句なしで面白い映画なので。
それではまた映画レビューでお会いしましょう。
カッチンでした。


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